第3話:もうあとに退けん
 

先週、こっそりバイクを事務所に持ち込んでから数日、はやる気持ちを抑えて自問していた。『どこまでやるか?』ホントはエンジンまで全部バラしてしまいたい。
 
写真ではそれなりに見えるのだけど、我がGBは生後20年の埃まみれで本当はとてもバッチイ。なので、さすがにエンジン内部は手に余るけれど、せめて外装関係はバラしてピッカピカにしたい!というのが理由その1。そして、ボクにとって様々な謎の塊であるオートバイという機械の仕組みを知るには、バラすのが一番近道なのでは?というのが、理由その2である。 


だが、待て待て。ただでさえ靱帯裂傷を理由に一ヶ月以上も仕事してないのに、そんなこと始めてしまったらこの先また仕事しないぞオレ。でもって、そんな贅沢が許されるほど企業体力ないぞウチ。

あーでもないこーでもないと悩みつつ結局結論が出ぬまま、おもむろにシートとガソリンタンクを外してみる。初めて見る己がマシンのヌード。そのオイル臭い臓物がぎっしり詰まった裸体を見ていたら、ムラムラしてきた。だんだん鼻息も荒くなる。も、もう、どうでもいい!行ったれ! 

ラチェットドライバーに各種ソケット。めがねレンチにTレンチ。インパクトドライバーにナイロンハンマー。遙か以前に用意していたツール類をほとんど全て使って、あちこちのネジとナットを押さえ、回し、叩く。あぁなんという快感!フロント回りのケーブル類をズリズリと引き抜き、マスターシリンダー、クラッチレバーを外す。ウインカーとヘッドライトを外し、ライトケースの中からメインハーネスを引きずり出す。トップブリッジを引き抜き、返す刀でエキパイ、マフラーを取り外し、そのまま左右のリアサスペンションを外す。

...と、ここでセンタースタンド上に屹立していた本体から、スイングアームを軸にした後輪がガッタンと床に落ち、その音でハッと我に返る。あらら。コレ、本当に元に戻るんですか? ...とりあえず手にかけたばかりの残像が残っている内に、いったん元に戻してみなくてはっ! 

冷や汗をかきつつ来た道を逆戻りし始めるが、覆水盆に返らず。なかなか上手く組み上がらない。 

子供の頃、居間の壁にかけてあった柱時計を分解してみたものの、元に戻せずハラハラした記憶が蘇る。いや柱時計ならサイアク時間が解らなくなるだけだが、コイツを間違って組み立ててしまったら命が危険だ。 

こういう時の人間の集中力には凄いものがある。ボクが内心ドキドキしながら組み立てに取り組んでいる最中、トーキチがなにやらバタバタと周囲を動き回っていた。もちろん目は彼の動きを見ているし、耳は彼の立てる音を聞いている。あまつさえ狭い事務所スペースゆえ、彼が傍らを通り抜ける時には身体をよけたりもしていた。

なのに、である。 注意を100%組み立てに向けているボクの頭脳は、彼が何をやっているのか全く理解していないのだった。...というか、その後、一緒にランチを食べに出た時に、彼が事務所中のゴミ箱内のゴミを収集してくれていたこと、45リッターのゴミ袋×4袋にもなるゴミを集積所に捨てに行ってくれたこと等が、「遠い昔の記憶」のように映像として蘇ってきてビックリ仰天。なんなんだ、この時間差再生は...。 

なにはともあれ。そういうわけで「解体」してしまいました。もう後には退けません!
2005年 10月 18日 火曜日